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> 魚の国ニッポンを釣る!
この日、ウエカツが期待していた魚はアジだけではなかった。そう。ひそかに期待していた魚はメバルやカサゴ。冬から春にかけて、猿島回りのアジの釣り船でも混じって釣れることがあり、これが特別に旨いのだという。
ウエカツ曰く、メバルの群れには特有の行動パターンがあるのだそうだ。「メバルの群れの形は、タテ型で。そして、その上のほうにいるヤツほど大きい。中でも大きなやつは、潮上の一番最初にエサを食べられる位置を陣取っている。」
春の海は、のたりのたり。温もった土手に小さな花を見つけたら、もう冬じゃない。白波を立てていた東京湾も、さぞ穏やかだろう。ウエカツは今、その東京湾は横須賀沖の猿島周辺でアジほか、五目釣りをしている。
メバル、わかめ、タケノコ、それぞれの淡さを楽しむため、濃い味にしないこと。釣りたての魚に火を入れると、身が爆ぜてしまうのは致し方ない。むしろ引き締まった魚の食感に、感動を覚えることだろう。
タケノコの柔らかい先端部分も一緒に揚げたら、湯通したわかめの芽株も、ぶつ切りにして添える。サクッと来てほの甘く、舌で崩れて喉に溶けゆく。このもどかしい味が、まだ早き春の気配と重なるのである。
メバル同様にアジに混じって釣れたカサゴ。早春は産卵に向けて味がのる。関西ではガシラ、九州ではアラカブと呼ぶ。
今回釣った3種以外に、沖の深場で釣れるウスメバル(通称・オキメバル)という魚もいるが別種である。
味がいいからアジ≠ニ呼ばれるという。海の環境が変わったのか、東京湾で一年中釣れるようになったのは嬉しいかぎり。
上田勝彦
うえだかつひこ
1964年、島根県出雲市生まれ。長崎大学水産学部在学中より、長崎県野母崎の漁船に乗り始め、各地を行脚する。平成3年に水産庁入庁。南氷洋の調査捕鯨や太平洋のマグロ漁場開発、日本海の資源復興プロジェクトなどを経て、現在は、加工流通課、魚食普及・水産物広報担当官。著書に『目からウロコの魚料理』(東京書籍刊)がある。
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