アジの合間に少しずつメバルの釣果も増やしていくウエカツ。
「メバルという魚は年功序列なんだな」ウエカツ曰く、メバルの群れには特有の行動パターンがあるのだそうだ。
「メバルの群れの形は、潮が効いて餌が流れてくると、魚群探知器で見ていてもわかるようにタテ型になる。そして、その上のほうにいるヤツほど大きい。中でも大きなやつは、潮上の一番最初にエサを食べられる位置を陣取っている。だから、大きいのは上のタナで掛かるでしょ?」
「でも、それより大きい尺越えサイズとなると、群れを離れて独自の餌取りをする。流れてくるものじゃなくて、体に合わせてもっと大きいエビ・カニや小魚を捕食するようになるからね」
しかし、春先のこの時期に釣れるメバルは、そんな大きなサイズはほとんどなく、15センチにも満たないような小さなものも多い。
「筍メバル≠チて聞いたことあるでしょ? 春先には小さなメバルがそれこそ雨後の筍のようにワンサと涌いてくる。さらにその時期が筍の生えてくる時期と重なるもんだから、そんなふうに言ったんでしょうよ」しかし、そんな小さなメバルを料理して、はたして美味しいのだろうか。
「この春の小メバルには、これにしかない味わいがあってね。でもその旨さを知ってる人は少ないと思うなあ」小型のメバルは一般的には値段もつかず、特に関東ではほとんど流通に乗ることがない。しかしウエカツは続けて言う。「この小メバルの天ぷらの味たるや、秋のハゼと双璧だね! これだけは釣って食わねばわからん、釣り人冥利の味なのよ」