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【第10回】〜平塚〜五目釣り|釣りの楽しさを支える 漁師たちの努力
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1日中シャクリ続けるこの釣りだが、タックルが軽いので疲れ知らず。小堀友理華がウマヅラゲット! ウエカツもニンマリ
どんな魚も食べ方次第で最高に美味しくなる!
伝統的な疑似餌・バケでカンパチを狙ってみる!
 クーラーが数々の魚で賑わいだした頃、サバが釣れだした。この魚が船の回りにやってくると、それこそサバしか釣れない事態となってしまう。いろんな魚を釣りたい≠ニいう今回の趣旨に従い、船は平塚沖から西に走り、大磯沖から西の国府津沖に転戦した。
 このポイントでは、特にカンパチやイナダが釣れるとのことで、カンパチを狙うなら、ウイリーよりもバケ≠使った仕掛けの方が効果があるという。
 バケは、フグやナマズといった魚の皮を干して三角形に切り、針に結びつけた伝統的な疑似餌。相模湾では昔からこのバケを使った手釣りによるカッタクリ≠ェよく行なわれていたというが、今はライトタックルによる竿カッタクリが主流となっている。
「カンパチっていうのは一匹かけると、他のカンパチが寄ってくるんだな。だから一匹かけたら泳がせておいて、交互に釣り上げると効率がいいと漁師は言うね」
 ウエカツがいう。
「ダイバーが海に潜ると、カンパチは真っ先に寄ってくるね。好奇心が強い魚なんだな。ただ、飽きるのも早い。だからバケの正体をすぐに見切ってしまうよ。」
 すると小堀がカンパチ並の好奇心で聞き返す。
「イナダもですか?」
「カンパチとイナダはキャラが違うようだね。イナダ、つまりブリは意外とゆっくり泳げるもんで網目を数える≠チていうくらいでね。定置網に入っても、一匹が穴を見つけて逃げ出すと、みんなそろって逃げちまう。同じブリ仲間だけれど単純なカンパチに比べると明らかに性格が違う」
 ウエカツも小堀も、とにかく一種でも多くの魚を求めて、ウイリーをシャクリ続ける。
 ネンブツダイにスズメダイといった、普通の釣り人であれば捨てる魚も、「いいねェ」と大事そうにキープしていくウエカツ。どんな魚も食べ方次第で最高に美味しくなることを知っているからだ。
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釣りの楽しさを支える漁師たちの努力
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網に納まったウマヅラハギに、釣れまくるシイラ。ウエカツのイナダとカンパチのキャラクター講義に始まり、プックリ膨らんでいるのは、でましたサバフグです!
 納竿間際となり、船は再び平塚沖へと戻った。すると小堀がひときわ強烈な引きの魚をかける。水面に上がったのは、白黒のストライプが鮮やかなイシダイだ。
 磯釣りの対象魚としても人気の高いこの魚が、ウエカツの狩猟本能にさらなる火を着けた。
「イシダイは、どのくらい待つのがいいのかね?」「2秒くらいです」「了解!」
 小堀のアドバイスに従ったウエカツは、すぐさま自分もイシダイを釣り上げる。さらにウエカツはイシダイを狙い続け、わずかな時間で4枚を釣り上げることに成功した。港に戻ったウエカツの顔は充足感に満ちていた。
「初めてやったけど、ウイリーっていう釣りはいいねえ。まず何が釣れるかわからない受け身のおもしろさ。さらに突き詰めると、いろいろ釣れる中でシャクリの幅と待ちの時間によって、魚を釣り分けられるという攻めのおもしろさもある。初心者も楽しめ、なおかつ深めれば奥行きもある。マダイやカンパチも釣れればよかったけど、とりあえず15種類は釣れたしね。まさに相模湾を堪能したな!」
 と、ウエカツを微笑ませた相模湾。確かに漁場として豊かな海だ。しかし、この海を、より沢山の人に楽しんでもらいたいと願い、いつ、どこに行けば、どんな魚が、どうすれば釣れるのかをピンポイントで日々研究し続けている漁師たちの努力があってこそ、このような釣りは成り立っているのである。時代の変化に合わせて、単に魚を獲る漁業だけでなく、限りある資源をさまざまに活用する道が開けつつある。
今回の船宿「庄三郎丸」
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神奈川県平塚市千石河岸57-17
TEL 0463-21-1012
【料金】乗合は大人9,500円から
【HP】http://www.gyo.ne.jp/shou3/
職漁船として百年以上の歴史を持ち、釣り船を初めて50年。平塚の名船宿。ライトウイリーにライトアマダイ、ルアーによるキハダやシイラなど、新しい釣りネタ開発でも定評がある。
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