今回の釣りは、はたして一日に何魚種釣れるのか、手当たり次第に釣ってみる≠ニいうのがテーマ。
ということでウエカツは、神奈川県・平塚漁港の船宿『庄三郎丸』
にやってきた。相模湾の沖釣り船の草分け的存在であるこの船宿が、周年行なっている人気の釣り「ライトウイリー」。
コマセカゴのついた片テンビンに、ウイリーという人工繊維を巻いた疑似針仕掛けを垂らしたこの釣法が巷に出回ったのは、もう四半世紀ほど前だろうか。
どんな魚を相手にも結果を残す、その圧倒的釣果は、当時沖釣りの革命≠ニまでいわれたほどだった。そのウイリーに魚の繊細なアタリや、豪快な引きをダイレクトに、そして手軽に楽しめるライトタックル釣法を融合すると、まさしく様々な魚を釣ろう≠ニいう今回のテーマにピッタリな釣りが実現するというわけだ。
「オレはウイリー釣りってのは初めてなんだけどね(笑)」
そういうウエカツだが、今回は最強の師匠がいる。同船したダイワ・フィッシングインストラクターの小堀友理華は、言わずと知れたライトウイリーの名手なのだ。
なにしろ学生時代は、この庄三郎丸で中乗り≠ニいう船長助手のアルバイトをし腕を磨いたほどだ。
ウエカツ・小堀の最強タッグによる釣りは、平塚漁港から航程わずか10分の、平塚沖の海洋気象観測塔の横から始まった。
「底から4メーター巻いて、8メーターまで誘ってください」
船長の指示がスピーカーから船上に響く。
ウイリー釣法は、ただ針を海中に漂わせていればいいというものではない。船長から指示された棚の中をシャクリ続け、出たコマセの中で針を動かすことによって初めて、魚は口を使ってくれるのだ。しかし、シャクった直後、竿先を静止させる間合い≠ェ大切で、小堀曰く、「汎用性の高いのが3秒待ち。マダイを狙うなら10秒待ち」とのことである。説明が終わるか終わらないかのうちに、底近くでウエカツの竿にアジが掛かり始めた。黄色い尻尾で幅広の金アジだ。
ひとしきりアジが釣れると、今度は、上層にシイラが寄ってくる。食欲旺盛なシイラのアタックはすさまじく、底に仕掛けを降ろす前に食いついてくる。そのうれしい猛攻を避け、仕掛けを降ろしたウエカツが釣りあげたのは良型のカワハギ。加えてソウダガツオも釣れだした。それも、よくお目にかかるマルソウダだけでなく、食味が1ランク上といわれるヒラソウダがお宝だ。小堀の特大ウマヅラハギも見事なものだ。
さっそくウエカツが、いつも通り、バケツに活かしておいた魚を即殺、放血、神経締めを施したが、いつもならエラの後ろにナイフを入れて血を抜くところ、なぜか頭の後ろの脊椎まで切断している。
「ウマヅラハギって魚は血が固まりやすいから、こうした方がよく血が抜けるんだ」
なるほど。魚の特性によって血抜きの方法も変わるというわけだ。
また、魚を最高の状態に保つ神経締めではあるが、当然手カギやワイヤーといった器具が必要となる。テクニックに自信がない、あるいはワイヤーを持ってないというような時は、「エラ元からナイフを脳の方に斜めに差し入れ、血管と脳を同時に破壊する。これを延髄締め≠ニいうけれど、特に連続して釣れて神経締めする暇がないときなどは、次善策として有効だね。神経を抜くなら、あとから尻尾に切れ目を入れて抜けばいい」