美味極楽メインページ魚の国ニッポンを釣る! > 【第9回】〜金沢八景〜マゴチ|待ちの釣り
【第9回】〜金沢八景〜マゴチ|待ちの釣り<}ゴチ釣り
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今日一日は待つのが仕事
待てばマゴチの日和あり
 マゴチ釣りは待ちの釣り≠セ。
 何度となくタナを取り直し、ただひたすらに、マゴチがエサに出会い、喰らいつくその時を持ち続けなければならない。
 そして待ち続けた者が幸運であったときにだけ、海の女神は微笑むのだ。
 それは、マゴチがエサのサイマキをくわえたコツコツ≠ニいうシグナルから始まる。
 しかし、ここで慌ててアワセをいれても釣針はスッポ抜けてしまい、幸せはどこかへ消し飛んでしまう。マゴチはまだサイマキのシッポにかじりついただけなのだ。
 竿先を少し送り込み、マゴチがその大きな口中にエサを完全にくわえ込む、その時を、さらに待つ=B
 10秒……20秒……。
 ジリジリと焼けつくような緊張が辺りを支配する。
 そして!! コツコツというシグナルが、グーッという重みに変わったその時、初めて大きく竿を煽るのである。
 満月に曲がる竿。確実に掛かった証拠だ。あとはただ丁寧に慎重にリールを巻き続け、いなし、玉網へと誘い込む。
 この時初めてマゴチは釣り人のモノとなる。静かな沈黙と釣れないプレッシャーに耐え、こらえきれた者だけが、この瞬間を掴むことができるのだ。
 マゴチ釣りには照りゴチ釣り≠ニいう言葉もあるくらい、その釣りシーズンは、梅雨明けから秋風が吹くまでの真夏限定と元来相場は決まっていたものだ。
「それが、最近は冬以外、年間を通して釣れるようになったんだ」
 ウエカツがいう。
「もともと遊魚船(いわゆる船宿が釣り客を乗せて釣りをさせる釣り船)の歴史っていうのは、色々と話を聞いてみると、昔はギコギコ漕ぐ櫓船でハゼやシロギスやクロダイを釣らせたりというような風情の、旦那遊びという側面が強かったようだ。
 それが昭和に入ってから30年代にかけては、漁師にお願いして船に乗せてもらい、本格的に釣りを楽しむ人たちが出てきた。
 そして昭和40年代から60年代にかけて、遊魚専門の船宿っていうのが誕生してくるワケだ」
 その当時の釣り船の対象魚といえば、カレイやアジ、シロギス、そしてハゼ、イシモチだったという。そこにマゴチが加わったのはなぜだろうか?
「それは船宿と釣り客が両輪になって、ニーズの中から開発していったんだろうね。たとえばシロギス釣りで掛かったシロギスに偶然マゴチが食いついた。それが頻繁になれば、『このマゴチを専門に狙えないかな?』とリクエストがあってもおかしくない」
人気の釣魚となった今もマゴチの数は減ってない
進化する釣り具
しかし消えゆく釣りもある
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 船宿は、そのリクエストに応え、専門に釣る工夫をしていく。これが東京湾遊漁船の真骨頂。そうして、マゴチ船が登場する。
 だが、この時点ではまだマゴチは夏限定の対象魚であったはずだ。
「そこに最近の釣り具の進歩が加わってきた」
 ウエカツの説明を聞こう。
「たとえばPEライン。細くても強度のあるPEならば、今まで潮が速くて狙えなかった漁場も軽いオモリで攻められるようになる。例えば今流行りのジギングなんてのは、PEラインなくしては絶対に成立しないでしょ」
 釣り糸に限らず、リールや竿、そして釣針といった仕掛けまで。研究と技術革新によってメーカーが生み出す数々の釣り道具。これらが釣り人の要望と船宿の努力と一体となった時、新しい釣りの対象魚が生まれ、釣り方が編み出され、釣りのシーズンまでが拡大されていくのである。
「だけどその逆に、哀しいかな、釣りの対象魚から消えていく魚もある」
 東京湾のアオギスはその代表格であるし、マコガレイなどもそのひとつだ。
「マコガレイは産卵と生育場がどんどん失われたため、なかなか増えてこない。同じことはアナゴにもいえるしアイナメもそうだね。これから先、こういった魚がまた復活することがあるのか、ないのか、それはわからない。ただし、その魚がまったくいなくなったわけではないんだな。漁業の対象としては残っているし、イシモチを釣っていて大きなアナゴが釣れるなんていうことは、たまにだけれどあるからね」
 しかし、遊魚船は乗った客にまんべんなくある程度の魚を釣らせなければならない。
 そんな釣果が現在のマコガレイやアナゴ、アイナメで期待できるかといえば、現状のままではそれは難しい。
 マゴチに関していえば、釣りシーズンは拡大しつつも、決してその数は減っておらず、現状維持で推移している魚だという。
「そう考えると釣り人も船宿も、釣りの対象魚を根絶やしにしてはいけないっていう気持ちが大切になってくるし、実際にそういう意識は少しずつ高まっていると思う。漁師とは別の意味での資源管理意識がね」
 ただし、ようやく芽生えかけている日本の釣り人の資源管理意識も、まだまだ遅れているとウエカツはいう。
「海外の『釣り仕掛け図鑑』のような本を見るとね、たいてい魚の説明と仕掛け図なんかと一緒に、体長制限と禁漁期が書いてあるんです。オーストラリアなんかだと、タイは20センチ以下は釣ってはダメだとか、アジは規制なしとかね。その点、日本の釣りの世界は大らかで、そこまでキッチリ全面的に決めたルールはない」
 その海外と日本の差は一体どこから生まれてくるのだろうか?
「釣りっていうのは欧米ではオカズ稼ぎというよりスポーツ♀エ覚なんだよね。例えば豪州で釣りをしてて、僕なんかは小魚でも旨いのを知ってるから持って帰ろうとすると、見物してた子どもとかにも言われちゃうからね。『それはリリースしなさい』って。『トゥースモール!』って言われますよ。まぁ一種のスポーツマンシップみたいなものが向こうの釣り感覚にはある。小さいのは獲ってはいけないという意識が子どもの頃から生活の中に浸透してるんだね。それは環境と教育の違いです」
「マゴチ釣りのポイント」
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エサは活サイマキかハゼを使用
 釣り方では特にエサ付けが大切で、慣れを要しますが、しっかり付けましょう。口から針を入れて頭の先端に針先を出します。エサが付けられたら、仕掛けが絡まないようにゆっくり仕掛けを海中に入れてエサが海底近くを泳ぐように調整して待ちます。あたりはコツコツから始まりグングンと竿に乗るまで待ってから合わせます。早合わせは禁物です。
 道具で重要なのは竿。キス用の竿でも代用できますが、エサを弱らせずに、小さなアタリから食い込ませることと、硬い口にしっかり針を刺すことができる竿が必要です。特に食い込ませるためにはただ糸を送り込むのではなく、適度な抵抗を与えることで、空振りなく針掛かりさせることができます、そのための適度なやわらかさの竿先で、2.1メートル前後のマゴチ専用の竿があると納得できる釣りができます。また、時には70センチを超える大物の可能性もあり、ドラグ性能のよいリールがあると安心です。
この日の仕掛け&タックル
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 竿はまさしくマゴチの為の一本。マゴチがエサをついばむアタリを確実に捉え、固い上アゴへの確実なフッキングを可能とする強い腰の『マゴチX』!
 リールは片手で巻き取り可能なスマック機能搭載かつ超軽量ボディの『スマック レッド チューン SH』!!
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