U「魚の味で、海の健康がわかる。特に東京湾の魚には川の香りもあって、この海の味そのものだと思う。もしそれが美味しくなくなったとあれば、みんな声を大にしていい。いや、その声が東京湾を変えていく大きな力になると思う。行政任せではなくてね。遊漁船は魚を釣らせるだけでなく、東京湾のおもしろさや素晴らしさを伝えて欲しい。どこで釣っているのか、海底の形状や昔話でも何でもいい。釣った魚も、ひと味違ってくるんじゃないかな」
K「今の話とつながるのかどうか…でも、東京湾の遊漁船のすごいところは、魚を種別にピンポイントで釣らせてくれるところ。遊漁の前は漁業をやっていた船宿も少なくないし、海との付き合いが長いからこそと、言えるのかもしれません。それも東京湾の素晴らしさのひとつだと思うんです」
N「横須賀ではクロダイのヘチ釣りをやったものだが、まさにピンポイントだった(笑)」
U「そういうことじゃないけど(笑)。ともかく、同じ魚を1年中追いかけていると漁場の生態や、海の状態が見えてくる。同じ場所で釣りを続けても、やはり同様の効果が得られる。そういう意味で、釣り人は特に、復活してきた東京湾を肌で感じているし、水の大切さを知っているはず。東京湾が逆戻りせぬよう、しっかり見守って欲しいね」
K「ただ楽しいから釣るだけではなく、別の視点も持って釣りをしなければ、なんですね」
N「釣り人が、水辺の環境監視人になっていく時代か。東京湾の再生がきっかけとなって、それが全国に広まったら……。全国の海のすばらしい未来が、現実味を帯びてくるよ」
U「海だけじゃなく川も池も、地域の水はその周りに暮らす人々の心の鏡だと思う。無関心になれば、その水はよどみ廃れてしまうし、逆に美しいとか、美味しい魚が捕れるとか、その水から恩恵を受けて大切に思う人々の眼差しが注がれる限り、水は死なない。水を殺すことに対する監視の目が、ちゃんとあることが重要なんだ」
N「自然界の仕組みってのは、常に生かそうと働いているんだね。東京湾と付き合う人は、全身で実感して欲しいものだね」
U「東京湾がさらに再生していくとしても、どんな状態を求めていくんだろうね…個人的にはいつの日か、“江戸前、あります!”。寿司屋に限らず、そんな看板が多くなったら嬉しいね」
K&N「それ、いい!」
――東京にいて、東京湾の存在が遠く思えるのは、距離ではない。見なくても過ごせる生活に、私たちは慣れてしまったのだろう。
魚種が豊富で、漁師も釣り人もみんなが笑顔になれる東京湾への再生。そして、全国への伝播。そのために魚好き、釣り好きの果たす役割は、これからますます大きくなっていきそうだ。