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「もう少し大きい1mくらいのシイラが、食べるには一番いいんだ」 |
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丸十丸の長女で釣り界では有名な天才釣り少女・小菅綾香嬢も同船し、2.8mのヨシキリザメを釣り上げた! |
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船上「シイラ刺し」。酢醤油とにんにくマヨネーズ醤油で食べる |
ウエカツは言う。
「今の日本は偏った魚ばっかり食べるようになってきている。マグロ、イカ、えび、サーモン、うなぎ、魚卵干物。10もないじゃん。日本全国で食べられる魚は300以上もいるんだ。それなのに、そういう偏った食べ方をしていると、生態系は必ず崩れる。これは小学生でもわかる理屈。
もともと日本人というのはまんべんなく魚を食べてた人種だからね。それが偏って食べるようになっちゃった。
日本はこれだけ恵まれた環境にある。足元にいろんな美味しいものが向こうの方からきてくれるのに、それを無視して、忘れておいて、海外から輸入して食べるっていうのは、どこかおかしいんじゃないかね」
好きなものだけを偏って食べるということは、ただシイラを食べるか食べないかというだけの問題ではなく、日本人が今、食に関して抱えている大きな問題のひな型なのかもしれない。
ウエカツはさらに言う。
「ボクはシイラは本当に恵みの魚だと思ってる。毎年必ず来てくれる。
それを遊びで釣ってリリースしたり、食わなかったり、えらいひどい仕打ちをしてると思わんか?
それにキロ30円なんていうとんでもない安値が付くこともある。それは巻き網で捕れる、養殖魚のエサ用の小さい小さいアジ、サバ、イワシの値段と同じ。
こんなに美味しい素晴らしい魚が養殖魚のエサと同じ値段なんだよ。『どういうことよ!』と世間に問いたいワケだ」
今、この『食楽』誌上でウエカツは、まさしく問うているのだ。
ただ新しい動きもあるという。
「神奈川の一部のスーパーなんかが、地元のもの地元で食べてもらおうと、シイラの切り身を置き始めている。魚屋が減ってしまっている現状では、スーパーには頑張ってもらわなければしょうがない。そういう意味で頼もしい限りですよ。
知らないものは、買う対象にも、食う対象にも入ってこないでしょう?でも知らない魚にも好奇心を持って欲しいんだな。
好奇心を持てば、そんな美味しい魚があるの? じゃあ探してみようとなって、気まぐれでも買ってくれるかもしれない。
そうやって、一度でも食べると『知らないもの』から、『知っているもの』になる。そうなると、次からは買う対象に代わり、食べる対象になってくる」
そんな希望のある日本の食の未来は、決して夢物語ではないとウエカツは言う。
「たとえば渋谷のギャルに煮干し出汁を飲ませた時に、『なに? 美味し〜』っていうわけ。それが煮干しだとはわからないんだけどね。それはもう世代が一巡して知らないものになってきているからなんだね。でも確かに美味しいものは美味しいとわかる。そこに未来への希望というものがある。
決して全て悲観する話ばかりじゃない。シイラが二束三文で扱われているという、もったいないこの時代が変わってくる可能性は大いにある」
若い世代に、本当にいいものを伝えていった時、彼らが何も知らない分、逆にまったく新しいものとして映るかもしれない。
なまじ先入観がない分、乾いたスポンジのように、本当のよいものをどんどん吸収していく能力は高いかもしれない。
そんなところにはビジネスチャンスもあるだろう。
そういえばシイラはハワイなどでは“マヒマヒ”として非常にメジャーな食材だ。それこそ渋谷のギャルなんか、「ハワイにいってマヒマヒ食べてきたら超美味しかった〜!」なんて平気で言っているのだ。
スーパーも『ハワイのシーフードでもおなじみのマヒマヒ』なんて名称でシイラを販売すれば、それこそ若い方が喜んで買うかもしれない。
いや、そんな変化球は投げなくとも、とにかくシイラは旨いのだ。
一度食べてもらえば、若い世代にも、今まで毛嫌いしていた関東周辺のガンコな世代にもすぐにわかるのだ。
「安くて大きく身がとれて小骨もない。季節感もある。本当に捨てるトコロがない。魚としても『肉』としても使える。たとえば、あのシイラの身を叩いて麻婆豆腐でもやってみな。とんでもなく旨いから。
似た魚が他にいない、まさにオンリーワンな魚。秋に鮭というならば、夏はシイラという、まさに最強の惣菜魚なんだ」
そうウエカツが太鼓判を押すシイラを食べ尽くす調理法は、次回確認してほしい。