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> 魚の国ニッポンを釣る!
本来ならば、雄大な富士山が船上から遠望できるはずであったが、低く垂れ込めた暗い雲が霊峰への視界を遮ぎっていた。
強烈な向かい風の中、沼津港を離れ漁場へと向かう森田丸の甲板上は、バケツをひっくり返したような波しぶきに見舞われている。
そんな中、何食わぬ顔で道具の準備をはじめる男。
「扱い次第でどうしようもない下魚にもなれば、超高級魚にもなる魚。それがサバの面白さよ!!」
駿河サバ。その質は間違いなく高級魚のそれであった。巻き網でいくら大量のサバが水揚げされても、ここに「駿河サバ」は、いわば別種の高級魚として歩み始めた。
「ゴマサバ」はいわゆる“外道”扱い。しかし…
「夏の“ゴマ”は、旨ぇぞ」
船頭に耳元でささやかれたのは20年ほど前。食べてみればその通り。以来、ゴマサバを投げ捨てる釣り人を哀れに思うようになったのは言うまでもない。
「ゴマサバは夏だけじゃのぉて、一年中旨い魚です」
「沼津では一本釣りを主体に“駿河サバ”をブランド化し、全国に売り出したいのです」
ゴマサバに目をつけた前出の江嶋力さんと、沼津我入道漁業協同組合長の川口吉彦さんの言葉が蘇る。高齢化が問題という地元漁業が、“駿河サバ”で活気づくことを願いたい。
サバとじゃがいも・キャベツのカレー煮にサバすき、上田勝彦流の料理。
サバとカレーの相性のよさを痛感させ、酒もいいがご飯と一緒にサバをかき込みたくなる、極上の旨さ。
さすがだ。
知る人ぞ知る駿河湾の輝ける根付きのゴマサバを、活け締め生ゴマサバとして出荷し、新ブランドサバとして普及させようという経産省の『農商工等連携事業計画』認定プロジェクト。一番上は同じ場所で獲れた大きなマアジ。
上田勝彦
うえだかつひこ
昭和39年島根県出雲市生まれ。長崎大学水産学部在学中より長崎県野母崎の漁船に乗りはじめ、各地を行脚する。平成3年に水産庁入庁。南氷洋の調査捕鯨や太平洋のマグロ漁場開発、日本海の資源回復プロジェクトなどを経て平成21年より増殖推進部研究指導課・情報技術企画官。魚食復興団体「Re-Fish」代表。
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