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> 魚の国ニッポンを釣る!
今日はハゼを狙い、船は木更津港の防波堤の中という鏡のような水面にイカリを下ろしていた。
ウエカツが釣る魚といえば、その豪快な風貌から、どうも”大物”というイメージがあるが、ハゼのような小物釣りはどうなのだろう。
1時間ほど悪戦苦闘し、船中で上がったイイダコは、淋しいかなわずか九杯。それでも竿を持つウエカツは、東京湾というこの大自然の道場を体全体で味わえる今日という日に感謝しているかのような満足気な表情である。
「浦安=青べか」と連想する世代は、もう古いような気がしないわけでもない。しかし、船宿が「吉野屋」と聞いて、心は動いた。作家が深く関わりをもった作中の釣り宿「千本」で、当時"長"と呼ばれていた小学三年生だった子孫に会えるかもしれない。
秋に走りの「イイダコ」は、まだ"飯"を持っていないのが残念。それでも小さな「一干し」を食いちぎると、なんと滋味深い。U氏おすすめの「なめろう」も、逸品だ。海へ下る頃の「マハゼ」は、産卵期をひかえて太っている。天ぷらは身ふっくらとして、刺し身も甘みがあって捨てがたい。
河川の汽水域から内湾にかけて棲息。釣りの対象となるのは主に正式名称『マハゼ』。江戸前の天ぷらには欠かせない、美味しい魚である
まるで米粒のような卵を持つことから、『飯蛸』と呼ばれる。東京湾では数年毎に大量発生(いわば大豊漁)するが、果たして今年は?
上田勝彦
うえだかつひこ
昭和39年島根県出雲市生まれ。長崎大学水産学部在学中より長崎県野母崎の漁船に乗りはじめ、各地を行脚する。平成3年に水産庁入庁。南氷洋の調査捕鯨や太平洋のマグロ漁場開発、日本海の資源回復プロジェクトなどを経て平成21年より増殖推進部研究指導課・情報技術企画官。魚食復興団体「Re-Fish」代表。
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