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【第3回】東京湾 ハゼ・イイダコ|東京湾の元気が舌に伝わる 西潟正人流 東京湾づくし
かの作家も釣り上げたハゼの料理に挑む
「釣果は、どうかね?」
「ハゼは、入れ食い。イイダコは…ハハハ」
 電話の声が、いつもと違う。おっとりと聞こえるのは、東京湾のそれも浅場釣りのせいか。前夜まで気をもませた、台風の余波はピタリと止み、海はさぞ凪いでいたに違いない。
「Nさん、料理は任せた。オレは今回、ちょっと忙しい」
 なんだって! サンプルを持って検査かい? マハゼなら天ぷらで、揚げモンはU氏の担当だったろう…などと文句を言っても始まらない。メニューを素早く頭に描き、順序立てて下ごしらえに入る。
 一般にハゼとは、「マハゼ」のこと。釣り人たちは初夏の当歳魚を"デキ"、産卵期を控えて晩秋に海へ下るものを"ケタ"、うっかり年を越した大物を"ヒネ"と呼ぶ。山本も、ヒネを一匹、どこかで釣っていた。
 小型は、釣り集めて佃煮にするといい。中型は干し上げてから炭火で焼き、正月の雑煮の出汁にするのが関東風だ。大型は天ぷらだけでなく刺し身にもするが、川に遡上すると有害異形吸虫の恐れがあり、生食は厳禁。ハゼは淡水域にも平気で入り込むから要注意だ。「イイダコ」は体長10センチほどの小型ダコで、春に持つ卵巣が"飯"粒に見えることから「飯蛸」だ。
 タコ類のやっかいなヌメリ取りは、頭部(腹)を開いて墨袋や内臓を取り除いてから始める。
 粗塩で揉み洗いをくり返すのも方法だが、サッと湯通しした後に水洗いすると簡単だ。また、茹ですぎると固くなる。食感をも楽しむ炊き込みご飯は別にして、料理は柔らかく仕上げることがコツだ。
 しかしながら、秋に走りの「イイダコ」は、まだ"飯"を持っていないのが残念。それでも小さな「一干し」を食いちぎると、なんと滋味深い。U氏おすすめの「なめろう」も、逸品だ。
 海へ下る頃の「マハゼ」は、産卵期をひかえて太っている。天ぷらは身ふっくらとして、刺し身も甘みがあって捨てがたい。
 じっくり味わうと、東京湾の元気が舌に伝わる。なぜなら"ウマい"とは、"健康"を食べていることだから。青べか先生が舌鼓を打った魚の味は、今もしっかり生きている。
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ハゼの天ぷら
材料(2人分)
ハゼ  6〜8尾
小麦粉  適量
全卵  1個
冷水  150ml
揚げ油  適量
作り方
(1) ハゼの頭部を落とし、3枚おろしの要領で中骨を取るが、尾びれの部分で2枚をつなげておく。松葉形にするイメージ。 photo
(2) 小麦粉、全卵、冷水を粗くかき混ぜ、ハゼの身をくぐらせる。ただし、ハゼの皮面にはあまり付けないようにする。 photo
(3) 180℃に熱した揚げ油で素早く揚げる。表面が軽くきつね色になる程度。 photo
(4) 油きりをした熱々の身を、塩でいただきたい。
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ハゼの刺身
材料(2人分)
ハゼ  6尾
味噌  小さじ1
ねぎ  2センチ程度
皮を焦がすことで香ばしさが増し、刺身の甘さがいっそう生きてくる。ただし、川に遡上したハゼの生食は厳禁。
作り方
(1) 胸びれの際から頭部を落として、3枚おろしにする。
(2) 腹骨をすき切る。 photo
(3) キモと味噌、長ねぎを叩いて混ぜ合わせ、キモ味噌を作る。 photo
(4) 金串を真っ赤になるまでコンロで熱し、ハゼの身の皮面に押し当てて、3本ほどの焦げ目をつける。キモ味噌を付けていただく。 photo
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イイダコのなめろう
材料(2人分)
イイダコ  3〜4杯
味噌  大さじ1
長ねぎ  5cm程度
作り方
(1) イイダコの墨袋と内臓を取り、湯通しして水洗いしたら、水気をしっかり拭き取り、目玉と口を取り除く。 photo
(2) 適当な大きさに刻んだら、長ねぎと味噌を叩きながら和える。タコをあまり細かくしない方が食感が残り美味。 photo
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タコめし
材料(3〜4人分)
イイダコ  4〜5杯
米  2合
塩・醤油  少々
作り方
(1) 研いだ米、ヌメリと内臓、墨袋を取ったイイダコを炊飯器に入れ、水を加える。ご飯を炊く水加減は、具材から水分が出るので、炊飯器が示す量よりやや少なめにする。 photo
(2) 塩・醤油を少々たらし、炊き込む。炊き上がったら十分に蒸らし、イイダコの赤紫色がご飯全体に行き渡るように、混ぜ合わせて茶碗に盛る。
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