美味極楽メインページthe chef and the sea > 最終回「早秋のキハダマグロ」編|笑いと涙、釣りのある人生
いい時もあれば、悪い時もある。
笑いと涙、釣りのある人生
the chef and the sea
釣りから完全自家製のアンチョビパスタ
 サザエはカボチャのポタージュと一体となった。カボチャの甘味にサザエの肝の滋味が加わり、なんとも奥深い味わい。船長のやさしさもたっぷり入っている。
 パスタも濃厚な魚のエキスを吸っていてしみじみ旨い。でもこれ、シイラとサザエを使ってますか?
「使ってない。これは自家製アンチョビのパスタ。春のヒラメ釣りでエサ用に釣った小サバをとっておいて、米麹で漬けておいたんだ。最終回だし、魚を発酵させて味わう魅力も伝えたいと思って」
 ありがとうございます! 奇しくも今日いた小田原沖で半年前に釣ったサバをこうして味わえるなんて。しかも発酵の力で旨味倍増。うれしいサプライズでさらに倍。
 シェフが自分で育てた新米を食べさせたいと作ってくれたのが、シイラのカツ丼だ。新鮮なシイラはふんわりジューシー。カツ丼の力強い味付け+白飯で無双状態だ。
「シイラは皮と身の間の独特の香りが毛嫌いされる。でも、味噌を塗り込むことで、それも美味しさに変えることができるんだ。シイラってホントは旨い魚なんだよ」
 イタリアンの要素がないような気もするけど、もはやそんなことはどうでもいい幸せな味。素材の持ち味を生かすシェフの真骨頂だ。
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リベンジの釣行は、千葉県・浦安から出航する東京湾のカワハギ釣り。いつもは撮影に専念しているカメラマンMもこの日は釣り三昧。シェフ、カメラM、ライターWの3人で、肝がたっぷり入ったカワハギ、サバフグ、アカトラギスなど調理が楽しみな味の良い魚が大漁! シェフは見事なトラフグを釣り上げて、みんなの度肝を抜いた。連載最終回を祝うかのような美しい小鯛も。4年間、お疲れ様でした!
釣りを通して確信した 料理人としての務め
 そういえば、連載第1回目でシェフが「料理の味の8割は食材の良さ。料理人にできることは2割」と話したことを思い出す。たくさんの釣りを経験した今の考えは?
「確信に変わったね。釣りをするようになって、生きている魚が温かいことを知った。生態や締め方でどうか変わるかという知識も増えた。その上で実感したのは、うちに魚を送ってくれる漁師のすごさだよ。締めの技術はもちろん、いかに手間ひまかけているか、愛情を注ぎ込んでいるかがわかるようになったのは大きいなあ」
 さらに、釣りを通してありのままの自然にふれることが料理に良い影響を与えるとシェフは続ける。
「キハダマグロ釣りの主戦場はかつては沖縄や鹿児島だったのが、和歌山沖になり、近年は相模湾になった。海水温の上昇の影響と言われているけど、こうした変化があらゆる海で起きていて、魚の旬も変わってきている。今の世の中、魚がどこに棲んでいて、どんなふうに捕られて食材となるのかを知らずに過ごすこともできるよ。でも、それを現地で体感していたらこの魚の価値を届けたいという思いも強くなる。料理人にできる2割には、消費の最前線で食材の価値をきちんと伝えるという責務もある。その気持ちが強くなったね」
 ボウズでは終われない。取材班は初めてダイワのサポートなしで、自主的に釣行へ出かけた。選んだのは東京湾でのカワハギ釣り。ポイントに着くなり「今年はカワハギいないよ」という船長の一言に驚愕したが、結果は大漁! シェフは大きなトラフグも釣り上げた。いい時もあれば、悪い時もある。それが釣りの醍醐味。一喜一憂もまた楽し。笑いと涙、釣りのある人生は、続いていく。
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今回の仕掛け&タックル
竿は細身で軽量なボディながら想像以上のパワーで巨大魚を制する「ディープゾーン 200-210」。リールにはキハダやカンパチなどの大型魚から、金目やムツまで、中深場から深場まで狙える「シーボーグ800MJ」を使用。
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今回の取材協力船宿「成銀丸」
キハダマグロのほか、秋はイナダやワラサ、冬は真鯛やカワハギ、春はヤリイカ、夏はイサキやアジなど四季の釣りを楽しませてくれる。

住所:神奈川県三浦市南下浦町松輪289-1
TEL:046-886-1719/0209
HP:http://www.naruginmaru.com
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