1時間ほどの調理でなんとも華やかな川魚づくしの食卓が整った。釣りはまだまだだけど、料理はスゴ腕!
釣った魚は水場で下処理を施す。近くで猫が魚を狙っているので要注意
さて、釣り上げたイワナ、ヤマメ、ニジマスは、シェフの手によって見る見る間に魅力的な料理になっていった。川魚料理と言えば炭火焼きが王道だが、シェフは定番の塩焼き以外に2種類を用意した。ひとつはほうとう用の味噌を表面と腹の中に塗り込んだ味噌味、もうひとつはセンター特製の焼きイモをつぶして醤油で伸ばしたタレを塗り込んだ焼きイモ醤油味だ。これがどちらも秀逸。味噌味は塩焼きとはまた違った香ばしさがあり、焼きイモ醤油味はほのかに甘みのある優しい風味を楽しめる。
ほうとうをパスタ代わりに使った一品でもシェフのアイデアは冴える。おろした魚の身をたたき、持参した強力粉とこねてつみれにする。つまりこれは魚のすり身入りのニョッキ。ドライトマトのダシと味噌味のスープで炊き上げるイタリアンほうとうの完成だ。しっかりイタリアンでありながら、しっかりほうとう。渡辺さんも目を白黒させながら「旨いなあ」と唸る。丹精込めて育てた魚が食べ慣れたほうとうに使われること自体が新鮮なのに、しかもおしゃれなイタリア料理での登場だ。
シェフが持参したストウブの中身は炊き込みごはん。ソテーしたニジマスも炊き込む一品となった。
釣り場近くの斜面でワサビの葉っぱと花をいただく
持参したストウブの鍋やスキレットなどを駆使して、野外調理に没頭
魚のぶつ切りのアクアパッツァのような料理は、ちゃんちゃん焼き。ほうとう味噌で下味を付けた魚がふっくらと焼かれていて、炭火焼もいいが、こちらもジューシーな旨みをストレートに楽しめる。
この日の食卓で最も華やかだったのが、ブラッドオレンジがふんだんに入った魚のソテーのサラダ。実はドレッシングには例の焼きイモが隠し味に使われていて、オレンジの爽やかさに濃厚な奥行きを加えている。さらに、ワサビ田で摘んだ葉ワサビと花が彩りを添えると共に、ピリリとしたアクセントとして、なんともいい仕事。
「土地の食材を獲れてすぐに調理していただくのは最高の贅沢。しかもその土地で親しまれている食材や調味料を使うと、風土に合った自然な美味しさを味わえるし、外の人間である僕らが新しい料理に挑戦することで、地元の人に取ってもそういう食べ方があったのか、という発見にもつながる。そして何より、楽しいよね」