満月のようにしなる竿。大物のイシダイがかかると、竿が持っていかれそうなほどの強烈な引きに襲われる
エサは三浦半島城ケ島の名物として知られるヤドカリ、アマガニ
伊仁丸では、簡素で堅牢な構造がイシダイ釣りに最適と、ダイワ製の年代物のリールが大切に使われていた
ひと気のない早朝の門前仲町。レストランまで迎えに行くと、シェフがなんとも清々しい様子。いつも元気な彼だが、釣りの朝はひと目で「あ、寝てないな」と前日の疲れが顔に出ている。しかしこの日は妙にシャキッとしている。
「釣りに行くの、間違えて昨日だと思ってたからさ、一昨日ものすごく頑張っていろんな仕事を片付けちゃったの。それが当日、あれ?今日じゃない明日だわ! ってなったもんだから、いつになくゆったりできたんだよ(笑)。バッチリ眠ってきたゾ」
釣りが待ち遠しいのはわかりますが、勢い余って予定を脳内で前倒しにするのはナシですよ。とにかくお元気そうで何より。
「今日はイシダイの大きいのを狙うんだって? ちょうど去年の今頃、イシダイ五目釣りをやって楽しかったけど、あの引きの強いイシダイのもっと大きいやつなんて、本当に釣れるのかねえ」
いつも根拠もなく楽観的な編集U氏も「今回はダメかもしれませんね、初めて市場に材料を仕入れに行く回になるかも」と弱気だ。シェフは大丈夫だよと励ます。
「開業した豊洲市場、早速下見してきたから。原付をどこに停めて、どういう順番で回るかまで完璧にシミュレーションできてるから」
かみ合っているようでかみ合っていない話をしているうちに、三浦半島の突端、間口港に到着。波は穏やかで、秋の風が心地いい。
「どんな竿持ってきたのー?」と現れたのは、この日お世話になる伊仁丸の船長・鈴木利徳さん。ちょっとヤル気のなさそうに見えた鈴木さんだったが(すみません!)、のちに優しくて頼りになるスーパー船長であることがわかり、素人集団である食楽釣り取材班の崇拝の対象となる。
竿は、船釣りを快適に楽しませてくれる「ライトゲームXV MH-180」。リールは滑らかな回転性能と高速での仕掛け落下を実現する、船用手巻きリールのフラッグシップ機の進化版「ミリオネア バサラ 200H」を使用した。