美味極楽メインページthe chef and the sea > Vol.03「早春のヤリイカ」編|イカのやさしい甘み
イカのやさしい甘み ホンモノの沖漬け
the chef and the sea
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波にきらめく日差しは心地よさげに見えるが、風は冷たく、波も1メートルを超え……と悪環境に苦戦しつつもイカ釣りに挑む
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釣ったイカをいしり・日本酒・みりんを合わせた調味液の入った容器に入れる。翌日には、程よい醤油の香りをまとった甘い身の沖漬けの完成
これからイカを買う時は
感謝の気持ちで

 タイムリミットまで粘ることおよそ6時間。今回、そのほとんどが海原を見つめながら投入の合図をひたすら待つ時間だった。釣果は4人で20杯足らず。その多くは同行してくれたダイワの凄腕インストラクターが釣り上げたものだ。コツは一旦海底に着いた仕掛けをスッと50センチほど浮かせ、ストンと落とし、イカの本能を利用して誘導しプラヅノ針に抱きつかせること。ベテランになると、仕掛けに5杯掛かったか6杯掛かったかまで手応えでわかるそうだ。
 感心しきりのシェフも、こんな珍しいほどの悪条件で4杯を釣り上げたのだから、大健闘だ。港へ帰る船の上でシェフは話す。
「イカって日本での魚介消費量の中でもトップクラスの身近な食材だけど、まだ知らないことばかりだと実感した。高性能な魚群探知機があっても今日のように釣れないこともあるんだから、経験と勘でポイントを選んでいた昔の人は本当に苦労しただろうね。1本釣りのイカは安くはないけど、これからは”買わせていただきます“
という気持ちになるだろうな。今日の経験は、ものすごく大きい」
 翌日、シェフはホンモノの沖漬けを食べさせてくれた。まずは沖漬けにせず丁寧に脱水した一夜干し風の切り身をひと口。イカのやさしい甘みがふわりと広がる。そして沖漬けもひと口。こちらは醤油ダレに引き立てられた上品な甘みが持続する。ずっと噛んでいたい、熱燗をキュッとやりたい衝動に駆られる。
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船宿のお母さん特製の野菜たっぷりの醤油ラーメン。釣りの後に振る舞われ、冷えた体を温めてくれる至極の一杯。この味を求めて釣りに来る人も!?
次回の大漁に期待し、
鮮度抜群のイカを調理

「モノがいいから、イタリアンでもやっぱりいいぞ」とシェフが出してくれたのは3皿。ハッサクが香るジェノベーゼソースをまとったイカは、なんとも春らしい味わいで、こちらも日本酒がほしくなるから不思議だ。煮込みは思い出のインツィミーノ。イカの旨みが凝縮されたこの煮込みをぜいたくにも、イカ墨のリゾットにかけていただく。新鮮なイカを丸ごと楽しめる深い味わいに思わず唸る……。今度、船宿の女将さんにも食べさせてあげてくださいね。 「イカ釣りはまたやりたい。普段は決して手に入らない鮮度抜群のイカを、存分に調理できる楽しみも味わえるんだから」
 どうやらシェフは、次は大漁を確信しているようだ。
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今回の仕掛け&タックル
水深200m前後と深いので、電動リール「シーボーグ300MJ」を使用する。
またプラヅノ針「MDスティックミラー11cm×5本」という擬似針を使用するので、エサは不要な、ルアー的要素が高い釣りとなっている。
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今回の協力船宿「喜平治丸」
三浦半島剣崎灯台そばの間口港から出船。イカを中心にタイやワラサなど地物を狙った釣りを案内してくれる。

神奈川県三浦市南下浦町松輪511(船宿)
TEL:046-886-1110
HP:http://kiheijimaru.co/accessoutfit/
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