美味極楽メインページthe chef and the sea > Vol.02「晩秋のウグイ・オイカワ」編|“雑魚”という魚はいない
“雑魚”という魚はいない どんな魚でも、ちゃんと食べたい
the chef and the sea
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「釣れたー」と嬉しそうなシェフ。オイカワを狙っていたが、まず釣れたのはカワムツ。なかなか思い通りにはいかないけれど、それも釣りの楽しさのうち
この世に“雑魚”という魚はいない
どんな魚でも、ちゃんと食べたい
釣りの原点は
「釣って食べること」
「この前、ある雑誌に”料理人が薦める本“ってことで、推薦図書を聞かれたの。それに、矢口高雄の全作品って答えちゃった。彼の『釣りキチ三平』には、人間が自然とどう向き合うか、料理人が天然の魚やジビエと向き合うかっていうヒントが、これでもかってほど詰まってるから」
 東京西部の秋川渓谷を目指すクルマの中で、シェフはいつにも増して冗舌だった。幼少の頃からいかに釣りキチ三平に憧れていたかという話が大半だが、渓流釣りへ向かう道中で、これほど士気が上がる話題はない。
「福岡とか浦安とかを転々として育ってきたんだけど、海は身近な一方、奥深い山ってのは縁がなくてね。山での釣りといっても子どもが自転車で行けるところだから、せいぜい郊外の小さな沼でね。それでも海とは感じる空気感が全然違って不思議な緊張感があって。その雰囲気が好きなんだ。水面の下にはなにがいるかわかりゃしないし、ちょっとやそっとじゃ釣れなさそうな感じ。スズメバチやヘビも潜む、美しいけど危険な自然……。小さな沼でさえそんなだから、幼い僕にとって、谷間に清らかな水が流れ、風がそよぐ渓流は憧れのフィールドだった。だから、今でも渓流ではワクワクして仕方がないんだ」
 待ち合わせの武蔵五日市駅に時間前に着くと、シェフは「ちょっとパトロールしてくる」と言う。釣具店をチェックしたいらしい。
 オイカワは釣れますか? 地元の人はどうやって釣るんですか? シェフの無邪気な質問に、2軒の釣具店の店主たちは丁寧に答えてくれた。笑顔で店を出る。
「うわ、楽しみになってきた!」
 これはシェフ流の準備体操のようなものなのかもしれない。

―――ところで、なんでオイカワなんですか? 雑魚って呼ぶ人もいますけど。

「雑魚って魚はいないと、僕は思っているの。鮎やマスはみんなが美味しい魚だってわかってるけど、オイカワがどんな味か知っている人は少ないよね。釣れても小さくて調理が面倒だから逃がしちゃう人が多いし、流通もしていないし。僕はそういったあまり食材に使われない魚もちゃんと食べてみたい。もし素材としてイマイチでも、美味しく食べる方法を探したい。釣って食べる。それこそが釣りの原点だと思うから、渓流釣りで軽視されがちなオイカワに魅かれるんだ」
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今回の仕掛け&タックル
竿はダイワの「渓流清瀬53M」。また川の中に入っていく釣りに最適なウェーダーにはダイワ「PW3204R」、餌箱などを入れる機能的なポケットのあるベストに「DV3404」を着用。装備も十分。
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今回の協力店「小峰おとり店」
ベテランの鮎師である小峰和美さんが営む、おとり専門店。鮎シーズン前にはトモ釣り講習会も開催。

東京都あきる野市館谷34
TEL:042-596-1124 
ブログ:http://blog.goo.ne.jp/ayu-tateyabaiten
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