早朝の渓流に向かう道には靄がかかり、どこか幻想的
充実感とともに納竿した取材班は、村内にある川魚の養殖場へ向かった。小菅村は日本で初めてヤマメの養殖に成功した地とされる。高品質なヤマメの生産で知られる『小菅養魚場』で、極上のヤマメを分けてもらった。
その後、道の駅で休憩していると、しばらく見えなかったシェフが両手に買い物袋を提げて「物産館で五千円も使っちゃった」と現れた。袋には地の野菜やほうとう、そば粉などの食材がたっぷり。
今回の料理3品は、すべてイワナを大切にじっくり煮出して作った骨酒がベースとなっている。
「釣りキチ三平の一平じいさんが、焚火で焼いたイワナを自生する竹の筒に川の水と酒とを一緒に入れて、それを火にかけて骨酒を作るシーンがあるんだ。これをやりたかったんだけど、つい浮かれて川の水を汲んで帰るのを忘れちゃった(笑)。ともかく最高の骨酒ができた。清流そのものを味わうようなこの骨酒をコンソメとして贅沢に使った3品なんだ」
スープは心がなんとも穏やかになる優しい味わい。川の畔で採取したミズがよいアクセントだ。ほうとうのボスカイオーラは、山の滋味を深く感じられる一品。これぞ真の和風パスタだ。地のそば粉で作ったポレンタは、さっくりふわっと焼き上げられたヤマメとよく混ぜていただく……シェフ、感動をいつもありがとうございます。
試食を終えて、シェフの発案でみんなでシェフの店の近所にある釣具店へ出かけた。糸を結ぶ練習をするための、糸と針を買いに。
俊敏な反応を示す穂先と、軽さと強さを両立する高密度HVFカーボンで操作性に優れた渓流竿「リバティークラブ硬調43Q」。そこにナイロンの道糸0.4号、ガン玉、ヤマメ7号の針をセレクトし、ブライト目印を結ぶ。餌はブドウ虫で挑んだ。