連載 ニッポン釣魚紀行 料理人、海へ。
VOL.7
料理人 「トラットリア・ブリッコラ」シェフ 北村征博氏×アジなど
海に眠る最高の食材を求め、『ブリッコラ』シェフ北村征博が向かったのは、横浜港から驚くほどの至近距離にもかかわらず、黄金アジという魅惑の食材の宝庫である本牧沖。流行のライトタックルに、金色の魚体が跳ねる!
北村征博◎1975年京都府生まれ。イタリアのロンバルディア州、エミリアロマーニャ州、アルトアディジェ州でそれぞれ1年ずつの修業後、都内のイタリア料理店シェフを経て、現在、新宿『ブリッコラ』シェフ。国産選りすぐりの食材を活かした、北イタリアの郷土料理を得意としている。

撮影◎村岡栄治 取材・文◎佐藤克之 撮影協力◎グローブライド(株)
ポイントに驚きタックルの軽さに驚愕
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アジ
味がいいから“アジ”と呼ばれるようになった、ポピュラーだが食味に秀でた魚。夏が旬の、まさしく今が一番味のいい魚!!
 入港船舶数日本一を誇る港・横浜港。その横浜港の山下埠頭と本牧埠頭に挟まれた場所に、老舗の船宿が軒を連ねる一角がある。
 新山下の船宿街だ。
 朝7時。『ブリッコラ』シェフ北村征博、そしてソムリエでもあるマネージャーの原品真一を乗せた渡辺釣船店の第七神功丸は、新山下の船着場を離れた。
 狙うはアジ。魚種としてはどこのスーパーでも見かけぬ日のない大衆魚ではある。しかし東京湾で釣り上げられるアジは、『黄金アジ』と呼ばれる超一級の食味を持つブランド魚なのだ。
 そしてそのブランド魚の釣れるポイントとは……。
「エ、こんなに近いんだ!!」。北村が驚きの声をあげたのも無理はない。そこはベイブッッジがよく見える、横浜港の防波堤を出てわずか5分たらずの海域であった。
 大都会のすぐ近くに、こんな豊穣の海のあることを、我々日本人は自慢してもいいのかもしれない。
 今日のタックルを握った北村が、さらに驚いた。
「軽いですねェ〜」。ロッドは『フィルダーアママル』、そしてリールに『NEWスマック』!
 伝統的なアジ釣りは、ゴツイ竿に電動リールというヘビーな道具立てを必要とした。
 だが今回のアジ釣りは、ここ数年圧倒的な人気を誇る“ライトタックル”と呼ばれる非常に軽い装備で臨む。
 特に『NEWスマック』は、高強度・超軽量の『ザイオン』という新開発の素材を用いているため、その軽さ、驚愕の一言。
 ポイントも近くてライト感覚ならタックルもライト。しかし釣れる魚は一級品という、いいとこ取りのフィッシングがスタートした。