連載 ニッポン釣魚紀行 料理人、海へ。
VOL.8
料理人 「アクアパッツァ」 シェフ 日良実×カワハギ
カワハギ。その戦略的でテクニカルな釣趣から、多くの釣り愛好者の心をとらえて離さない超人気ターゲット! それに挑むは、日本中のイタリア料理愛好家の心を長年に渡って楽しませ続けてきた稀代の名料理人『アクアパッツァ』総帥・日良実!!
ひだかよしみ/1957年神戸生まれ。調理師学校卒業後、神戸『アランシャペル』でフランス料理を学んだ後、イタリア料理へ転身。単身イタリアへ渡り『エノテカ・ピンキオーリ』『グアルティエーロ・マルケージ』などの名店を含め、3年間でイタリア全土14軒もの店で修業。90年『アクアパッツァ』シェフに就任。現在『アクアパッツァ』はじめ系列店を率いるオーナーシェフ。同時に、日本のイタリア料理界全体をも牽引する業界の巨匠。『アクアパッツア』という料理がここまで有名になったのもこの人のおかげ。

撮影◎村岡栄治 取材・文◎佐藤克之 撮影協力◎グローブライド(株)
うねりの残る金谷の海に
カワハギ目指して船は出る
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カワハギ
釣趣、味趣、その両方から釣りの対象として圧倒的な人気を誇る魚。カワハギという名前の由来は、皮が簡単に剥がせることから
 早朝7時。日良実は、内房・金谷の港へと着いた。船着場から見える秋の海は、前日までの時化の影響で多少のうねりを残しているようだった。
「船酔い止めの薬、飲みますか?」
『食楽』スタッフが尋ねる。
「ん〜、今まで釣りで沖に出て、酔ったことはないから大丈夫だと思うけど」。この取材の1週間ほど前にも、横須賀の観音崎でアジ釣りをしてきたという日。カワハギも何度か釣ったことがあるという。
「でも専門的に釣り方を教わったことはないからね〜」
 カワハギ釣りは、沖釣りの中でも特に奥深いことで知られている。
 海中を自由に上下移動し、いつの間にか餌を喰い尽くすカワハギ。
その裏をかき、持てる限りのテクニックを駆使して釣り上げようとする釣り人。
 そんな戦略的ともいえる虚々実実の駆け引きの妙。そしてカワハギの食材としての食味の良さ。特にこの秋から冬にかけて肥大した肝のとてつもない旨さ。これらを求めて、多くの釣り人がこの知的な海上のゲームに魅せられている。
 日本屈指のイタリアンシェフは、見事このゲームを制することができるのか? 日を乗せた光進丸は桟橋を静かに離れた。